ブルーベリー栽培を続けていると、時に樹の元気がなくなり、新芽の伸びが悪くなったり、葉が小さくなったり、果実の収量が減少したりすることがあります。これが「樹勢低下」と呼ばれる状態です。今回は、ブルーベリーの樹勢が低下する主な原因と、その回復方法について詳しく解説します。
樹勢低下の見分け方
まず、ブルーベリーの樹勢低下を見分けるポイントをご紹介します。以下の症状が見られる場合は、何らかの問題が発生している可能性があります。
- 新梢の伸びが極端に短い(10cm以下)
- 葉が小さく、色が薄い
- 葉に黄化や褐変が見られる
- 枝先が枯れ込む
- 花や実の数が極端に少ない
- 実が小さく、味が落ちる
- 枝の先端部分だけに葉がつく「はげ枝」が目立つ
- 樹全体がやせ細って見える
これらの症状が一つでも見られたら、早めの対処が必要です。では、具体的な原因と対策を見ていきましょう。
1. 土壌pHの変化による樹勢低下
原因
ブルーベリーは強い酸性土壌(pH4.0〜5.5)を好む植物です。土壌のpHが上昇し、アルカリ性に傾くと、鉄分などの微量要素が吸収できなくなり、樹勢が著しく低下します。
症状
- 葉の黄化(特に新葉)
- 葉脈は緑色のまま葉肉部分が黄色くなる(鉄欠乏症状)
- 新梢の伸長が悪い
回復方法
- 土壌pHの測定:まず市販の土壌pH測定キットで現状を確認しましょう。
- 酸性度の調整:
- 硫黄粉:土壌に混ぜることでゆっくりとpHを下げます(効果は遅いが持続的)
- 硫酸アルミニウム:より速効性があり、緊急時に使用できます
- ピートモスの追加:表土に5〜10cmほど敷き詰めます
- 灌水の見直し:
- アルカリ性の水道水よりも、雨水や井戸水を利用する
- やむを得ず水道水を使う場合は、一晩汲み置きするか、酢を少量(水10Lに対して酢10ml程度)加えて酸性に調整する
- 鉄分の葉面散布:
- キレート鉄剤を葉面散布すると、一時的に鉄欠乏症状を緩和できます
- 根本的な解決には土壌pHの調整が必要です
2. 水はけ・水もち不良による樹勢低下
原因
ブルーベリーは水はけと水もちのバランスが重要です。根が常に湿った状態や、逆に極端に乾燥した状態が続くと、根の機能が低下します。
症状
- 水はけ不良:葉の黄変や落葉、根腐れ
- 乾燥:葉の縁が茶色く枯れる、葉が小さい
回復方法
- 水はけ不良の場合:
- 鉢植えなら、より排水性の良い鉢に植え替える
- 地植えの場合は、周囲に排水溝を掘る
- 植え付け位置を高くして、マウンド状に盛り土する
- 粗目の有機物(バークチップなど)を混ぜて土壌の通気性を改善する
- 乾燥対策:
- マルチング材(おがくず、松葉、バークチップなど)を5cm程度敷く
- 定期的な水やりの習慣をつける(特に鉢植えの場合)
- 保水性のある有機物(ピートモスなど)を土に混ぜる
- 根域の環境改善:
- 根圏を広げるために周囲の土を軽く耕す(根を傷つけないよう注意)
- 有機物を混ぜて土壌環境を改善する
3. 肥料の過不足による樹勢低下
原因
肥料不足はもちろん、過剰な施肥も根を傷め、樹勢低下を招きます。特に窒素過多は枝葉ばかりが茂り、花芽形成を阻害することがあります。
症状
- 肥料不足:葉が小さく薄い緑色、新梢の伸びが悪い
- 肥料過多:葉焼け、根の傷み、花芽形成不良
回復方法
- 適切な肥料プログラムの実施:
- 基本は年3回(春・収穫後・秋)の施肥
- ブルーベリー専用肥料または酸性肥料を使用する
- 窒素・リン酸・カリのバランスが取れた肥料を選ぶ
- 肥料過多からの回復:
- 一時的に施肥を中止する
- 鉢植えなら水をたっぷり与えて余分な肥料を流す
- 地植えの場合は、周囲の土を少し掘り起こして肥料濃度を下げる
- 有機質肥料の活用:
- 化学肥料より緩効性のある有機質肥料(油かす、魚粉など)に切り替える
- 腐葉土やコンポストを表土に混ぜる
- 微量要素の補給:
- 鉄分不足には硫酸第一鉄やキレート鉄剤
- マグネシウム不足には硫酸マグネシウム(エプソムソルト)を葉面散布
4. 剪定不足や過剰な結実による樹勢低下
原因
剪定を怠ると古い枝が増え、栄養が分散して樹全体の勢いが落ちます。また、実を付けすぎると樹に大きな負担がかかります。
症状
- 細い枝がたくさん出て込み合っている
- 枝の先端だけに葉がつく「はげ枝」が増える
- 果実が小さく、味が落ちる
回復方法
- 適切な剪定:
- 樹勢が弱っている場合は、思い切った剪定で樹を若返らせる
- 古い枝(4〜5年以上)を地際から切り取る
- 細く弱い枝、込み合った枝を取り除く
- 剪定は休眠期(落葉後〜芽吹き前)に行う
- 結実調整:
- 樹勢が弱っている場合は、花芽の一部を摘み取る
- 特に若木(植え付けから2〜3年)は、花をすべて摘み取り樹の成長に専念させる
- 成木でも樹勢に見合った量の実だけを残す
- 若返り剪定:
- 極度に樹勢が低下した場合は、地上部を大幅に切り戻す「若返り剪定」を検討
- 主幹の1/3〜1/2程度を残して切り戻す
- 若返り剪定後は肥料と水管理を徹底し、新しい枝の育成を促す
5. 病害虫による樹勢低下
原因
根頭がんしゅ病や炭疽病などの病気、カミキリムシなどの害虫被害が樹勢低下を引き起こすことがあります。
症状
- 葉の斑点、変色、早期落葉
- 枝の枯死
- 幹や枝に虫の食害痕
- 根の腐敗や異常な肥大
回復方法
- 病害対策:
- 罹患部位の除去と適切な処分
- 銅剤や有機殺菌剤による予防的な散布
- 風通しを良くする剪定
- マルチングによる土壌病害の防止
- 害虫対策:
- 定期的な観察と早期発見
- 適切な薬剤散布または有機的防除法の実施
- カミキリムシなどの幹を食害する害虫は、成虫の捕殺と幼虫の除去
- 粘着トラップの設置
- 予防的管理:
- 定期的な消毒
- 健全な樹勢維持(適切な肥培管理)
- 周辺の雑草管理
6. 老化による樹勢低下
原因
ブルーベリーは長寿命の果樹ですが、10年以上経過すると徐々に古い枝が増え、樹勢が低下することがあります。
症状
- 新梢の伸びが全体的に悪い
- 果実が小さく、収量が減少
- 古い枝の割合が高い
回復方法
- 若返り剪定:
- 3〜5年かけて計画的に古い枝を除去
- 毎年1/3程度の古い枝を地際から切り取り、新しい枝の発生を促す
- 極端に樹勢が落ちている場合は、主幹を含めた大幅な切り戻しも検討
- 土壌改良:
- 根圏周辺の土を一部入れ替える
- 有機物を多く含む新しい土を投入
- 根を傷つけないよう注意しながら作業する
- 施肥プログラムの見直し:
- 若木より少し多めの肥料を与える
- 特に春の発芽前の施肥を充実させる
7. 鉢植えの根詰まりによる樹勢低下
原因
鉢植えの場合、根が鉢いっぱいに広がり、水や養分の吸収が悪くなることがあります。
症状
- 水はけが極端に悪くなる
- 鉢底から根が飛び出している
- 新梢の伸びが著しく悪い
- 葉が小さく、黄化しやすい
回復方法
- 適切な植え替え:
- 2〜3年に一度、一回り大きな鉢に植え替える
- 植え替え時期は休眠期(落葉後〜芽吹き前)が最適
- 根鉢の外側を軽くほぐし、古い土を一部除去する
- 根の剪定:
- 根詰まりがひどい場合は、根の外周を1〜2cm程度カットする
- 傷んだ根や腐った根は完全に除去する
- 新しい用土への植え替え:
- ピートモスを主体とした酸性の培養土を使用
- 鉢底には必ず排水層を設ける
- 植え付け後はたっぷりと水を与える
樹勢回復のための総合プログラム
複数の要因が絡み合っている場合も多いため、以下の総合的なアプローチがおすすめです。
1. 現状分析
- 土壌pHの測定
- 葉色や新梢の伸びの観察
- 根の状態確認(可能な場合)
- 過去の管理履歴の振り返り
2. 短期的対策
- 適切な剪定による樹形調整
- 葉面散布による緊急栄養補給
- 土壌pHの調整
- 病害虫の駆除
3. 中長期的対策
- 土壌環境の改善
- 適切な肥培管理プログラムの確立
- 定期的な剪定と更新
- マルチングの実施
4. 経過観察
- 新梢の伸長具合
- 葉色の変化
- 花芽の形成状況
- 翌年の結実状況
まとめ
ブルーベリーの樹勢低下は、早期発見と適切な対処により回復可能です。特に重要なのは、土壌pHの管理、適切な水管理、計画的な剪定、そして適切な肥培管理です。これらの基本をしっかりと押さえ、定期的に樹の状態を観察することで、長期間にわたって健康なブルーベリーを育てることができます。
樹勢が回復すれば、豊かな実りが戻ってきます。ブルーベリーは比較的丈夫な果樹ですが、その特性を理解した上での適切なケアが必要です。この記事で紹介した方法を参考に、ぜひあなたのブルーベリーの樹勢回復にチャレンジしてみてください。
次回は「実がつかない・落ちる原因と対策」について詳しく解説します。ブルーベリー栽培でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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