長い間手塩にかけて育ててきたぶどうの収穫時期がついに到来しました。しかし、収穫は単に実を切り取るだけの作業ではありません。適切なタイミングと方法で収穫することが、ぶどうの美味しさを最大限に引き出す重要なポイントになります。今回は、ぶどうの収穫に関する基本的なコツと注意点をご紹介します。
収穫の適切なタイミングを見極める
ぶどうの収穫時期は品種によって大きく異なりますが、一般的に開花から90〜120日程度で収穫期を迎えます。収穫のタイミングを見極めるポイントは以下の通りです:
- 色の変化:品種特有の色に完全に変わっているか確認しましょう。巨峰なら濃い紫黒色、シャインマスカットなら黄緑色に変化します。
- 果粉の発生:成熟したぶどうの表面には「果粉(ブルーム)」と呼ばれる白い粉状のものが付着します。これは鮮度の証でもあります。
- 弾力と触感:適度な弾力があり、指で軽く押すとわずかに凹む程度が理想的です。
- 房全体のバランス:一房の中で8割以上の粒が熟していることが収穫の目安です。
ただし、全ての粒が100%完熟するのを待っていると、早く熟した粒が過熟になってしまうことがあります。房全体のバランスを見て判断しましょう。
朝の時間帯に収穫する
ぶどうの収穫は、朝の涼しい時間帯(午前中)に行うのが理想的です。その理由は:
- 朝は果実内の水分や糖度が安定している
- 気温が低いため果実が傷みにくい
- 朝露が乾いた後(果実が濡れていない状態)が最適
- 日中の暑さで果実が柔らかくなる前に収穫できる
特に真夏の暑い日は、早朝の収穫が品質保持に大きく影響します。
正しい収穫道具を使用する
適切な道具を使うことで、ぶどうを傷つけずに効率よく収穫できます:
- 剪定ばさみ:先の尖った、鋭利な剪定ばさみを使用しましょう。刃先が細いものが房の奥の茎にもアクセスしやすいです。
- 果実用はさみ:ぶどう専用の収穫ばさみもあります。これは刃先が曲がっており、房に近づきやすい設計になっています。
- 収穫かご:柔らかい素材の収穫かごを用意し、収穫したぶどうを丁寧に置いていきます。
ぶどうを収穫する際は、必ず清潔な道具を使用してください。錆びた道具や汚れた道具は病原菌を運ぶ可能性があります。
正しい切り取り方
ぶどうを収穫する際の正しい切り取り方は以下の通りです:
- 茎の適切な位置で切る:房の付け根から2〜3cm程度残して切り取ります。短すぎると房が崩れやすくなり、長すぎると見栄えが悪くなります。
- 房を支えながら切る:片手で房を優しく支え、もう片方の手で剪定ばさみを使います。
- 房を回転させない:収穫時に房を回転させると粒が外れやすくなるので注意しましょう。
- 一気に切る:茎を何度も切らず、一度で切り取るようにします。
特に大粒品種(巨峰など)は粒が取れやすいので、房を揺らさないように注意深く扱いましょう。
品種別の収穫のポイント
主な品種ごとの収穫のポイントをご紹介します:
デラウェア
- 小粒で房が密集しているため、房の内側まで色づきを確認する
- 糖度13度以上が収穫の目安
- 完熟すると果皮が薄くなるので、扱いに注意が必要
巨峰・ピオーネ
- 果皮の色が均一に紫黒色になっていることを確認
- 果粉(白い粉)が十分に出ていることを確認
- 房の肩の部分(上部)から先に熟すので、下部の粒も確認する
- 糖度18度以上が理想的
シャインマスカット
- 果皮が黄緑色に変化し、半透明感が出てくるのが収穫のサイン
- 糖度18度以上、酸度0.5%以下が目安
- 日持ちする品種なので、完熟を待っても大丈夫
醸造用品種(メルロー、シャルドネなど)
- 糖度と酸のバランスが重要で、用途に合わせた収穫時期を選ぶ
- 種子の色が茶色に変わっていることを確認
- ワイン用は若干早めに収穫する場合もある
収穫時の注意点
ぶどうを収穫する際に注意すべきポイントをいくつか挙げます:
1. 果粉(ブルーム)を保護する
- 果粉は鮮度や風味を保つ天然のコーティングです
- 収穫時に果粉を擦り落とさないよう、粒に直接触れないようにしましょう
- 房は必ず茎の部分を持って扱います
2. 傷んだ粒の処理
- 収穫前に傷んだ粒や病気の粒を見つけたら、その場で取り除きます
- カビが発生している粒があれば、他の健全な粒に広がる前に除去しましょう
- 傷んだ粒を取り除く際は、専用のぶどう用ハサミか清潔なピンセットを使用します
3. 雨天後の収穫は避ける
- 雨の後は果実が水分を吸収して味が薄くなっていることがあります
- 雨の後は最低でも1〜2日待ってから収穫するのが理想的です
- 雨で濡れた果実は病気にかかりやすいので、完全に乾いてから収穫しましょう
4. 収穫後の即時処理
- 収穫したぶどうはすぐに日陰の涼しい場所に移動させます
- 高温多湿の場所に置くと、急速に品質が劣化します
- 長時間放置せず、できるだけ早く選別・保存処理を行いましょう
収穫直後の取り扱い
収穫したぶどうの鮮度と品質を保つために、以下の点に注意しましょう:
- 選別作業:収穫後すぐに傷んだ粒や未熟な粒を取り除きます
- 冷却処理:特に暑い日に収穫した場合は、風通しの良い涼しい場所ですぐに予冷します
- 洗わない:食べる直前まで洗わないことで、果粉を保護し鮮度を保ちます
- 適切な容器に移す:通気性の良い容器に移し、粒同士が押しつぶされないよう注意します
収穫後の保存のヒント
収穫したぶどうを少しでも長持ちさせるためのヒントをご紹介します:
- 冷蔵保存:家庭用冷蔵庫の野菜室(約5℃)で保存するのが一般的です
- 湿度管理:湿度が低すぎると茎が乾燥して粒が落ちやすくなるため、適度な湿度を保ちましょう
- エチレンガスに注意:りんごやバナナなど、エチレンガスを発生させる果物と一緒に保存しないようにします
- 房の吊り下げ保存:伝統的な方法として、風通しの良い冷暗所で房を吊り下げて保存する方法もあります
収穫量の調整
初心者の方がよく陥る失敗の一つが、収穫量の見誤りです。樹の健康と来年の収穫のためにも、以下のポイントを押さえましょう:
- 樹の大きさや樹齢に合わせた適正な収穫量を守る
- 欲張って全ての房を残すと、品質が低下する可能性がある
- 初結実の若木は、樹を育てることを優先し、収穫量を控えめにする
- 樹勢が弱っている場合は、思い切って収穫量を減らし、樹の回復を優先する
収穫の記録をつける
毎年の収穫データを記録しておくことで、栽培技術の向上につながります:
- 収穫日
- 気象条件(その年の特徴)
- 収穫量
- 糖度や酸度のデータ(測定した場合)
- 味や品質の評価
- 特記事項(病気の発生状況など)
これらの記録は、翌年以降の栽培計画を立てる際の貴重な資料となります。
まとめ
ぶどうの収穫は、長い栽培期間の集大成です。適切なタイミングと方法で収穫することで、甘くて美味しいぶどうを存分に楽しむことができます。品種ごとの特性を理解し、丁寧に収穫作業を行いましょう。
次回は「収穫後の保存方法」について詳しくご紹介する予定です。鮮度を保ちながら長く楽しむ方法や、保存中のトラブル対処法についてお伝えします。
自家栽培のぶどうは、市販品とは比べものにならない新鮮さと風味が魅力です。収穫の喜びを存分に味わいながら、大切に育てたぶどうを最高の状態で味わってください。皆さんの収穫が実り多きものとなりますように!

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