ブルーベリーを自分の庭でもっと増やしたい、あるいは特にお気に入りの品種を複製したいとお考えではありませんか?取り木(とりき)は、ブルーベリーを確実に増やす方法の一つで、挿し木よりも成功率が高いことで知られています。今回は、ブルーベリーの取り木の方法について、初心者の方でも実践できるよう詳しく解説します。
取り木とは?ブルーベリー増殖の確実な方法
取り木とは、親株から切り離さないまま枝に発根させ、根が十分に成長した後に切り離して新しい株として育てる方法です。ブルーベリーの繁殖方法としては、挿し木や株分けなどもありますが、取り木には以下のような特徴があります:
- 高い成功率:親株から栄養を受け取りながら発根するため、挿し木より成功率が高い
- 親木と同一の特性:実生(種から育てる)と違い、親木と全く同じ特性・品質の果実が得られる
- 初心者でも取り組みやすい:比較的シンプルな作業で成功しやすい
- 設備投資が少ない:特別な設備がなくても実施可能
ブルーベリーの取り木に最適な時期
ブルーベリーの取り木に最適な時期は、春の新芽が出始めてから初夏までです。具体的には:
- ハイブッシュ系:4月中旬〜6月上旬
- ラビットアイ系:4月下旬〜6月中旬
この時期は樹液の流れが活発で、枝が柔軟性を持ち、発根しやすい状態にあります。秋に行うこともできますが、冬を越す前に十分な根の発達が必要なため、春から初夏の実施をおすすめします。
取り木に必要な道具と材料
取り木を始める前に、以下の道具と材料を準備しましょう:
- 剪定ばさみ:枝の一部の皮を剥ぐために使用
- 小型のナイフ:皮を環状に剥ぐ際に使用
- 水苔(スファグナムモス):発根を促進する培地として使用
- ビニールシート:水苔を包むために使用
- 麻ひもまたはビニタイ:固定用
- アルミホイル(任意):光を遮断し湿度を保つために使用
- 発根促進剤(任意):発根を促進するために使用
- 酸性培養土:後の植え付けに使用
ブルーベリーの取り木の手順
1. 適切な枝の選定
取り木に適した枝の選び方は成功率を大きく左右します:
- 1〜2年生の若い枝を選ぶ(直径5〜8mm程度)
- 健康で病害虫の被害がない枝を選ぶ
- 適度な柔軟性があり、折れにくい枝を選ぶ
- 地面に近い位置にある枝が作業しやすい(高い位置の場合は空中取り木になります)
2. 環状剥皮(かんじょうはくひ)
選んだ枝の皮を環状に剥ぎ取ります:
- 枝の基部から20〜30cm離れた位置を選ぶ
- その位置から約2〜3cmの幅で環状に皮を剥ぐ
- 木質部(白い部分)が見えるまで剥ぐが、深く傷つけないよう注意
- 剥いだ部分の両端をきれいに整える
この環状剥皮により、枝の先端で作られた養分が下に流れず、剥皮部分に蓄積され、そこから新しい根が発生しやすくなります。
3. 発根促進処理(任意)
発根を促進するために、以下の処理を行うことができます:
- 市販の発根促進剤を剥皮部分に塗布する
- または、剥皮部分に小さな傷をいくつか入れて発根を促進する
4. 水苔の準備と巻き付け
水苔を使って剥皮部分を包みます:
- 水苔を水に浸し、軽く絞って湿らせる(水分過多にならないよう注意)
- 剥皮した部分を中心に、前後5cmほど余裕を持たせて水苔を巻き付ける
- 水苔の厚みは2〜3cm程度にする
5. ビニールでの包装と固定
水苔が乾燥しないようにビニールで包みます:
- 水苔を巻いた部分の上からビニールシートを巻く
- ビニールの両端をしっかりと麻ひもやビニタイで縛る
- 水が溜まらないよう、ビニールの下部に小さな穴を数カ所開ける
- 直射日光が当たる場合は、アルミホイルで覆って遮光する
6. 管理と観察
取り木部分の管理は非常に重要です:
- 水苔が乾燥していないか定期的に確認(1週間に1回程度)
- 乾燥している場合は、注射器などで水を少量注入
- 2〜3ヶ月後、ビニールの上から軽く触って根の発生を確認
7. 切り離しと植え付け
十分な根が発生したら、親株から切り離します:
- 根の発生を確認したら(通常2〜4ヶ月後)、ビニールを慎重に取り外して根の発達を確認
- 根が十分に発達していれば(白い根が水苔全体に広がっている状態)、取り木部分の下を切断
- 切断後、水苔はそのままにして、ブルーベリー専用の酸性培養土を入れたポットに植え付け
- 直射日光を避け、風通しの良い半日陰で1〜2週間養生
- その後、徐々に日光に慣らしていく
空中取り木の方法
地面に近い位置に適した枝がない場合は、空中取り木を行うことができます:
- 基本的な手順は同じだが、枝が高い位置にある場合の特別な配慮が必要
- 水苔を包んだ後、支柱などで取り木部分を支える
- 水苔の乾燥に特に注意し、こまめに水分補給を行う
取り木の成功率を高めるコツ
取り木の成功率を高めるために、以下のポイントに注意しましょう:
- 適切な湿度管理:水苔が乾燥しすぎず、かといって過湿にもならないよう調整
- 適切な時期の選択:春の生育が活発な時期に実施
- 健康な枝の選択:樹勢の強い健康な枝を選ぶ
- 環状剥皮の幅:広すぎず狭すぎない適切な幅(2〜3cm)で剥皮
- 根の確認:焦らず、十分な根が発生するまで待つ
ブルーベリーの品種別の取り木のポイント
ブルーベリーの品種によって、取り木の難易度や適した方法に若干の違いがあります:
ハイブッシュ系
- 比較的発根しやすい
- 環状剥皮の幅は2cm程度で十分
- 発根までの期間:約2〜3ヶ月
ラビットアイ系
- ハイブッシュ系より発根にやや時間がかかる
- 環状剥皮の幅を少し広め(2.5〜3cm)にするとよい
- 発根までの期間:約3〜4ヶ月
- 発根促進剤の使用が特に効果的
ローブッシュ系
- 地面を這うように広がる性質があるため、自然に地面に接した枝から発根することも
- 通常の取り木よりも「伏せ木」(枝を地面に這わせて一部を土に埋める方法)が適している場合も
取り木苗の育成と管理
取り木で得られた新しい苗は、以下のように育成します:
- 初期管理:切り離し後の最初の1ヶ月は特に注意深く水やりと遮光を行う
- 鉢上げ:根がポットに回ったら、一回り大きな鉢に植え替える
- 肥料:弱い液肥を2週間に1回程度与える(最初の1ヶ月は控える)
- 剪定:最初の年は花芽を摘み取り、樹勢を充実させる
- 植え付け:翌春または翌々春に定植する
取り木と他の繁殖方法との比較
ブルーベリーの他の繁殖方法と比較すると、取り木には以下のような特徴があります:
繁殖方法 | 成功率 | 難易度 | 所要時間 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
取り木 | 高い | 中程度 | 2〜4ヶ月 | 親株と同一の特性、確実に発根 |
挿し木 | 中程度 | やや難 | 1〜3ヶ月 | 多数の苗を一度に作れる |
株分け | 高い | 易しい | 即時 | 樹齢の高い株に適用、数に限りがある |
実生 | 低い | 易しい | 3〜4年 | 遺伝的多様性があるが、親と特性が異なる |
まとめ:ブルーベリー取り木の魅力
取り木は、ブルーベリーを増やす方法の中でも特に初心者に適した方法です。確実に発根させることができ、親株と全く同じ特性を持つ苗を得られる点が最大の魅力です。
特にお気に入りの品種があれば、取り木で増やして庭のあちこちに植えたり、友人に分けたりすることができます。また、市販されていない珍しい品種を維持・増殖する手段としても有効です。
次回は、ブルーベリーの株分けの方法について詳しく解説します。様々な繁殖方法をマスターして、ブルーベリーガーデンをより豊かにしていきましょう。
この記事は「ブルーベリーの育て方」シリーズの一部です。ブルーベリーの基礎知識から栽培方法、病害虫対策、収穫と活用法まで、幅広くご紹介していきます。次回もどうぞお楽しみに!
コメント