ブルーベリーを長く育てていると、大きく成長した株を分けて新しい株を増やしたいと思うことがあります。株分けは、親株と全く同じ特性を持つクローン株を得られる繁殖法で、特に成長した株を若返らせる際や、お気に入りの品種を増やしたい時に役立ちます。今回は、ブルーベリーの株分けの方法について、初心者の方でも実践できるように詳しく解説します。
なぜ株分けが有効なのか
ブルーベリーは繁殖方法がいくつかありますが、株分けには以下のような利点があります:
- 親株と同一の特性を維持できる:実生(種から育てる)方法と違い、親株と全く同じ品種特性を持つ株が得られます
- 比較的簡単に成功する:挿し木よりも成功率が高い場合が多いです
- 成長が早い:すでに根が発達しているため、挿し木よりも早く成長します
- 株の若返りになる:古くなった大株を分割することで、親株も若返らせることができます
株分けに適した時期
ブルーベリーの株分けに最適な時期は、以下の2つです:
- 早春(3月上旬〜4月上旬):芽が動き出す前の休眠期終わりが理想的です。この時期は根の活動が始まりかけており、分けた後の活着が良好です。
- 晩秋(11月〜12月初旬):落葉後、完全に休眠に入る前の時期も株分けに適しています。ただし、寒冷地では冬の凍結による影響を避けるため、春の方が安全です。
いずれの場合も、成長期(5月〜9月)の株分けは避けるべきです。この時期は水分要求が高く、株分けによるダメージから回復しにくいためです。
株分けに適した株の条件
株分けに適したブルーベリーの株は以下の条件を満たすものです:
- 樹齢3年以上の十分に成長した株
- 複数の茎(幹)が出ている株
- 健康状態が良好で、病害虫の被害がない株
- できれば根元から複数の茎が出ているもの
特に、ラビットアイ系のブルーベリーは根元から多くの茎を出す性質があり、株分けに向いています。ハイブッシュ系も株分け可能ですが、茎の分岐が少ない場合は難しいことがあります。
株分けに必要な道具
準備するものは以下の通りです:
- 剪定ばさみ(枝を切るため)
- スコップまたはシャベル(掘り起こし用)
- 移植ゴテ(細かい作業用)
- のこぎり(太い根を切る場合)
- 清潔なナイフ(根を切り分ける用)
- 消毒用アルコール(道具の消毒用)
- 植え付け用の鉢または植え穴の準備
- 酸性培養土(ピートモスと腐葉土を混ぜたもの)
- マルチング材(おがくずや松葉など)
株分けの手順
1. 株の掘り起こし
- 株の周りに、枝の広がりよりやや広めの円を描くようにスコップを入れます。
- 深さ30cm程度まで掘り下げ、根を傷つけないように注意しながら株全体を掘り起こします。
- 掘り起こした株の周りの土を軽く落とし、根の状態を確認します。
2. 株の分割
- 掘り起こした株を観察し、どのように分割するか計画を立てます。理想的には、各分割株に以下の要素が含まれるようにします:
- 少なくとも2〜3本の健康な茎
- 十分な量の根
- 成長点(新しい芽が出る部分)
- 手で優しく根をほぐし、自然な分かれ目を見つけます。無理に引き裂かないよう注意しましょう。
- 自然に分かれない場合は、清潔なナイフやのこぎりを使って根を切り分けます。切る前に道具をアルコールで消毒してください。
- 各分割株には、バランスの良い量の根と茎がつくようにします。あまりに小さく分けすぎると生存率が下がります。
3. 植え付け
- 分割した株はすぐに植え付けることが重要です。長時間、根を空気にさらさないようにしましょう。
- 植え付け先(鉢または地植え)にブルーベリー用の酸性培養土を用意します。pHが4.5〜5.5の範囲になるよう調整されていることを確認してください。
- 植え穴を掘り、分割株を置いて、根が広がるように配置します。元の株と同じ深さになるよう注意しましょう。
- 土を優しく押さえて隙間をなくし、たっぷりと水を与えます。
- 表面にマルチング材(おがくずや松葉など)を敷いて、乾燥を防ぎます。
4. 株分け後のケア
- 水やり:最初の2週間は土が乾かないように注意深く水やりをします。特に鉢植えの場合は乾燥に注意が必要です。
- 日陰管理:株分け直後は直射日光を避け、明るい日陰で管理します。1〜2週間後に徐々に日光に慣らしていきます。
- 剪定:株分け時に地上部(茎や枝)の3分の1程度を剪定すると、根と地上部のバランスが取れ、活着率が上がります。
- 花芽の除去:株分け後の最初の年は花芽を取り除き、株の充実に栄養を使わせます。
- 施肥:株分け直後の施肥は控え、活着して新芽が出てきた頃(約1ヶ月後)から酸性肥料を薄めて与え始めます。
株分けの成功率を高めるコツ
- 適切な時期を選ぶ:前述の通り、早春か晩秋が最適です。
- 十分な大きさの株を選ぶ:小さすぎる株の分割は避けましょう。
- 分割数を欲張らない:一度に多数に分けるより、2〜3つに分ける方が各株の生存率が高まります。
- 根の乾燥を防ぐ:作業中も根が乾かないよう、湿らせたタオルなどで覆っておきます。
- 植え付け後の水管理:特に活着するまでの水管理が重要です。
- 根と茎のバランスを取る:根の量に対して地上部が多すぎる場合は、枝を適度に剪定します。
品種による株分けの違い
ブルーベリーの主要3タイプによって、株分けの特性に若干の違いがあります:
- ラビットアイ系:根元から多くの茎を出す性質があり、株分けに最も適しています。分割後の回復も早い傾向があります。
- ハイブッシュ系:株によって茎の分岐の仕方が異なります。複数の茎が出ている株なら分割可能ですが、単幹の場合は挿し木の方が適しています。
- ローブッシュ系:地下茎で広がる性質があり、株分けに向いています。ただし、日本での栽培は少ないです。
株分け後の管理スケジュール
株分け後の1年間の管理スケジュールの目安です:
- 1〜2週間目:日陰で管理、土が乾かないよう注意して水やり
- 3〜4週間目:徐々に日光に当てる時間を増やす
- 1ヶ月後:新芽の成長が見られたら薄い液肥を与え始める
- 2〜3ヶ月後:通常の管理に移行(ただし強い肥料は控える)
- 翌年:通常の栽培管理を行い、2年目から結実を期待できる
株分けと他の繁殖法の比較
ブルーベリーの繁殖法には株分け以外にも、挿し木、取り木、実生などがありますが、それぞれに特徴があります:
- 株分け:成功率が高く、成長も早いが、親株が必要で分割数に限りがある
- 挿し木:多くの苗が得られるが、技術が必要で成功率にばらつきがある
- 取り木:成功率が高いが、1株から得られる数が少ない
- 実生:遺伝的に異なる株が生まれるため、品種の特性が維持されない
初心者の方には、まず株分けから始めることをお勧めします。次のステップとして挿し木や取り木にチャレンジするとよいでしょう。
まとめ
ブルーベリーの株分けは、お気に入りの品種を増やしたり、古い株を若返らせたりするのに効果的な方法です。適切な時期に、健康な株を選んで行えば、比較的高い成功率で新しい株を得ることができます。
株分けした苗は、2〜3年で結実するようになり、親株と同じ特性の果実を楽しむことができます。また、株分けは親株にとっても若返りの効果があり、古くなった株の再生にも役立ちます。
次回は「取り木の方法」について詳しく解説する予定です。ブルーベリーの繁殖方法を様々なアプローチで習得して、ガーデニングの楽しみを広げていきましょう。
この記事は、ブルーベリー栽培シリーズの「第12章:繁殖と増やし方」の一部です。挿し木や取り木など、他の繁殖方法についても、別記事で詳しく解説していきます。
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