ブルーベリーの剪定は、健全な樹形を維持し、豊かな実りを得るために欠かせない作業です。しかし、ブルーベリーには主に「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」という異なるタイプがあり、それぞれの生育特性に合わせた剪定方法が必要です。今回は、品種タイプ別の剪定のコツを詳しく解説します。
ハイブッシュ系の剪定:整然とした樹形を目指して
ハイブッシュブルーベリーは北米原産の品種群で、「ブルークロップ」「デューク」「スパルタン」などの品種が含まれます。樹高は1.5〜2m程度に成長し、比較的コンパクトな樹形が特徴です。
ハイブッシュ系の生育特性
ハイブッシュ系の主な特徴は以下の通りです:
- 樹高が比較的低く、枝が密集しやすい
- 2〜3年生の枝に最も良質な果実がなる
- 古い枝は徐々に結実力が低下する
- 新しい枝は地際から発生することが少ない
ハイブッシュ系の基本剪定手順
- 古い枝の除去:樹齢5年以上の古い太い枝は、地際から切り取ります。これらの枝は果実の生産性が低下しているため、新しい枝の成長のためのスペースを確保します。1年に全体の約20%程度の古い枝を除去するのが目安です。
- 混み合った枝の間引き:樹冠の中心部に向かって内側に伸びる枝や、他の枝と交差する枝は取り除きます。これにより、日光が樹冠内部まで届くようになり、風通しも良くなります。
- 弱い枝の除去:細くて弱々しい枝や、地面に向かって垂れ下がっている枝は切り取ります。これらの枝は良質な果実を生産できないことが多いです。
- 樹高の調整:樹高が高くなりすぎた場合は、上部の枝を適度に切り戻して、収穫しやすい高さに維持します。ただし、一度に樹高の1/3以上を切り詰めないように注意しましょう。
- 若返り剪定:樹齢の進んだハイブッシュ系は、数年かけて段階的に若返り剪定を行います。一度に全ての古い枝を切ると樹に大きなストレスがかかるため、3〜4年かけて古い枝を順次更新していきます。
ハイブッシュ系剪定のポイント
- 剪定の基本は「古い枝を除去して新しい枝を育てる」という考え方です
- 樹の中心部が空洞状になるような「花瓶型」の樹形を目指します
- 樹冠内部まで日光が届くよう、枝の密度を適度に保ちます
- 剪定は休眠期(落葉後〜芽吹き前)に行うのが基本ですが、収穫後の夏季剪定も効果的です
ラビットアイ系の剪定:旺盛な成長力をコントロール
ラビットアイブルーベリーは北米南東部原産の品種群で、「ティフブルー」「パウダーブルー」「ホームベル」などが代表的です。樹高は放任すると3〜4mにも達する強健な生育が特徴です。
ラビットアイ系の生育特性
ラビットアイ系の主な特徴は以下の通りです:
- 成長が非常に旺盛で、樹高が高くなりやすい
- 枝が直立気味に伸びる傾向がある
- 古い枝でも比較的良く結実する
- 地際から新しい枝(サッカー)が多く発生する
- ハイブッシュ系より樹勢が強く、剪定に対する回復力も高い
ラビットアイ系の基本剪定手順
- 樹高の制限:放任すると非常に高くなるため、収穫しやすい高さ(2〜2.5m程度)に抑えるための剪定が必要です。高くなりすぎた主枝は、若い側枝が出ている位置まで切り戻します。
- 地際からの新梢(サッカー)の管理:ラビットアイ系は地際から多くの新梢が発生します。これらは将来の主枝となる可能性があるため、強健なものを数本選んで残し、残りは地際から除去します。
- 内向きの枝の除去:樹冠の中心に向かって伸びる枝は、他の枝と絡み合う原因となるため除去します。
- 古い枝の更新:ハイブッシュ系ほど頻繁な更新は必要ありませんが、7〜8年以上経過した古い枝は徐々に更新していきます。
- 混み合った枝の間引き:特に樹冠上部が密集しやすいため、適度に間引いて日光が樹内部まで届くようにします。
ラビットアイ系剪定のポイント
- 旺盛な成長を抑制することが重要です
- 地際から発生する新梢(サッカー)を計画的に育成し、古い主枝の後継とします
- 樹高制限のための剪定は、収穫後の夏季に行うと効果的です
- ハイブッシュ系より強めの剪定に耐えることができますが、一度に樹全体の1/3以上を剪定しないよう注意します
- 複数の主幹を持つ株立ち状の樹形が基本となります
両タイプに共通する剪定のコツ
剪定のタイミング
- 冬季剪定(主剪定):落葉後から芽吹き前までの休眠期に行います。特に2月〜3月初旬が適期です。
- 夏季剪定:収穫終了後(7月下旬〜8月)に行う軽い剪定で、樹形の調整や風通しの改善に効果的です。
剪定道具と注意点
- 剪定鋏(せんていばさみ):細い枝の剪定に使用
- 剪定ノコギリ:太い枝の切断に使用
- 消毒用アルコール:道具の消毒に使用(病気の蔓延防止)
剪定を行う際は、必ず清潔な道具を使用し、切り口は枝の付け根に近い位置で、芽の上部約5mm程度の位置で斜めに切ることが大切です。
剪定強度の目安
初心者の方は、一度に強い剪定を行わず、以下の目安を参考にしてください:
- 若木(1〜3年目):最小限の剪定にとどめ、樹の成長を優先します
- 成木(4年目以降):年間の剪定量は全体の20〜30%程度を目安にします
- 老木の若返り:3〜4年かけて段階的に行います
まとめ:品種タイプに合わせた剪定で豊かな実りを
ブルーベリーの剪定は、品種タイプによって異なるアプローチが必要です。ハイブッシュ系は比較的コンパクトな樹形を維持しながら古い枝を更新していくことが重要であり、ラビットアイ系は旺盛な成長力をコントロールしながら適度な樹高を保つことがポイントです。
それぞれの品種タイプの特性を理解し、適切な剪定を行うことで、健康な樹を育て、毎年豊かな収穫を得ることができるでしょう。次回は「季節別の剪定方法」について詳しく解説していきます。
剪定は最初は難しく感じるかもしれませんが、樹をよく観察し、少しずつ経験を積むことで、コツをつかむことができます。ブルーベリーの樹と対話するつもりで、丁寧に剪定を行ってみてください。
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